すいかの水分

無職30代 日々の記録

読書記録:浮雲

何とはなしにテレビ画面から流れ出る放送大学の番組を眺めていた。
『都市・建築の環境とエネルギー』という授業の第2回の講義映像が流れていた。

(第2回か~そういえばまだ4月の中旬だった)

建築に大きな興味を抱いたことは今まで無い。
しかし、その講義内容は、世界の地域の気候と風土に焦点を当てたもので、途中から興味深く見ていた。

講師の梅千野教授がこう発言した。
「雨が多く降るという地域、例えば屋久島。
林芙美子の小説『浮雲』の一節では≪屋久島は1ヶ月の内、35日雨が降る≫なんて表現もあるほど。機会があったら読んでみて下さい」

放送大学の講義を注視して見たのは今回が初めてだった。
なんだかいつも、つまらんな~と思いながら流し見をする程度だったので、今回は思わぬ収穫だった。

小説は今までほとんど読まずにきているので、ちょうど良い機会だから読んでみよう、青空文庫ってなんて便利なんだ!

というわけで一気に読了。

時代背景は、第二次世界大戦の戦中から戦後にかけて。
戦時中に林野庁タイピストとしてベトナムに渡ったゆき子と林野庁の技師 富岡との物語である。
フランス人が入植して開発した避暑地ダラットの描写が物語全編を通して挿入される。
南国のむせ返るような湿った空気と鬱蒼とした森林がありありと思い描ける描写が美しかった。
以前私がベトナムを旅行したときは、ホーチミン、ダナン、ホイアンを周り、ダラットへは行かなかった。
今回それを今更ながら口惜しく感じた。


30代無職、今読むのにピッタリの小説であった。